新撰組のヒミツ 壱
羽織りの中に隠していたクナイを懐に忍ばせ、短刀のような短い脇差しを腰に差した。その長さは、普通の脇差しよりも遥かに短い。


外に行こうとした光だが、このまま屯所内を彷徨けば、侵入者として成敗されかねない。顔は知られている為、覆面はせずに門の前まで急いだ。


門まで出来るだけ気配を消して走って行くと、斎藤率いる三番隊が隊列を組んで控えていた。目に映る浅葱色の隊服が眩しく、また、自分が忍に過ぎないと痛感した瞬間だった。


監察方とは名ばかりの――、


首を振り、自嘲に満ち足た邪念を頭から消すと、先頭に立っていた斎藤に近づく。


「お待たせしました、一さん」


「……光か。これで揃ったな。行くぞ」


全身を黒装束で包んだ光に、斎藤は一瞬驚いた顔をした。だが、覆面を取っていたお陰だろうか、顔を見て納得したようだ。


「私は屋根から行きます」


「ああ、頼む」


斎藤の静かな返事を聞くなり、光は近くの家の瓦屋根に一瞬にして飛び上がった。


近頃はあまり、忍の真似事はしていなかった為、若干の不安があったのだが、感覚は鈍ってはいないようだ。


すると同時に、鋭敏になっていた光の聴力は、三番隊隊士の驚きの声を捉えていた。

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