新撰組のヒミツ 壱
徐々に暗くなる空。鈍色と朱色が入り混ざった奇妙な色合いをしていて、今や忍のように疾走する光を闇に紛れさせる。


屋根から屋根へ、足音をほとんど立てずに移動していく。ただ周りの風を唸らせ、過ぎ去る台風の目にいるように、静かで恐ろしい。


斎藤たちは、いつの間にか遥か後ろに置いてきている。だが、光の仕事は一足先に京の街を偵察することだ。


諍(イサカ)いがあれば、それをその巡察時の組長に報告し、もし可能であれば自力で粛正すること。


それが土方から任された仕事である。
――やはり、私は体のよい捨て駒として使われていくのだろうか、と胸にざわめきを感じて唇を噛んだ。


そう考えていると、特に治安が悪いという京の街外れで、微かな刀と刀のぶつかり合う金属音が響いていた。


(副長の言うとおり、早速だな……)


瓦を蹴り、即座にその場所へ急行する。周りに野次馬はおろか、人一人いない。審判も稽古師範もいない、純粋な殺気のみが満ちる殺し合いであった。


浪士の風体をした一人。そして笠を被ったもう一人が斬り合いをしているようだ。


(あれは人斬り……だな)


人気がない場所を一人で歩いていた浪士に人斬りが襲いかかり、斬り合いとなってしまった、というところだろうか。


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