魔界動乱期
「これは、霧の……幻影の能力だってのか?」

ジードは、昔ラウドが話してくれた霧の属性の能力について思い出していた。

‘霧の属性はな、自分の姿を消す事がその能力ではない。元の景色の上に、幻影で作り出した景色を上書きする。それにより自分の姿を見えなくするんだ’

‘じゃあ攻撃もすり抜けるのかい?’

‘いや、見えないだけで、攻撃は当たるよ。幻影の景色の中では、例えば本来の景色ではそこにあったはずの木とかはすりぬけてしまう。だが、幻影の主だけは不可能だ。姿や臭いなどの全てを消す事は出来るが、本体の存在そのものは消す事は出来ない’

「ヤツの居場所さえ特定出来ればいいんだ。攻撃のときには姿を現す。いち早く攻撃を察知することが出来れば!集中だ……」

ジードは自然と目をつぶった。
無意識に、である。
攻撃時は姿を現すといっても、正面から来る事はない。
死角からの攻撃でないと、通常時に姿を消している意味がないからだ。

だから目で見るのではなく、体全体で攻撃の瞬間を感じるしかない。
ジードはそれを本能的にわかっていたのだろう。
< 101 / 432 >

この作品をシェア

pagetop