魔界動乱期
「ダメージが大きすぎる……目が霞むが……逃げきれるか……」

アバル兵はその場から走り出した。
既に幻影を作り出す気力はない。

「待て!……うっ」

立ち上がろうとしたジードは、頭を押さえ膝をつく。

「任せな!」

逃げるアバル兵をニコが追いすがり、喉元へ噛みついて倒し、地面に押さえつけた。

「おい、グレオとラルーをどこへ隠した?それから、今までアバルが魔獣の森に立ち入らず、そのかわり俺達も森の外で暴れない、てのは暗黙の了解だったはずだ。それをなぜ……?」

「ぐ……、アバル様は‘力’を手に入れた。その力があれば、魔界を支配できる!!」

「力だと?それはキメラの開発って事か?」

「新たな‘力’は、キメラを遥かに凌ぐ……ぐふっ!!」

「こ、こいつ……!?」

そこへフラフラとジードがたどり着く。

「大丈夫かジード」

「ああ、落ち着いた。しかしこいつ……」

「ああ、自害した」

アバル兵は秘密を盛らさないためか、それとも傷が深く生きることは不可能と悟ったのか、舌を噛み切って自害していた。

しばらくすると、体をふらつかせながらグレオとラルーが現れた。

「グレオ、ラルー!無事だったか!!」

グレオはラルーに向かって「どうだ、見たことか」とばかりに肘でラルーをつつく。
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