魔界動乱期
「グレオ、すまねえ。やっぱりジードさんは俺のボスだ」

仲間を救うためモルキに、ディナスに、そして今回はこの得体の知れない敵に挑み、意志を遂げてきたジード。

「ディナスにやられそうなときボスが来てさ。力の差は歴然だったのに、俺はなぜか安心感に包まれたんだ。ボスならなんとかしてくれるってな」

ジードには志を貫く強さと、皆に何かを期待させる不思議な魅力がある。
これはジードグループだけでなく、ジードに関わった者は皆そんな思いを抱いていた。

しかしそんな皆の思いとは裏腹に、ジードはある大きな不安と戦っていたのだ。
さっき空の能力を使った時も、頭の中に響いていたことがある。

‘ジード・エルナーク……目覚めよ……エルナークよ!’

ジードはディナスと戦った時の事をおぼろげながら覚えている。
そして妖狐が去ってゆくときに残した言葉も。

‘悪魔の子’

「俺の中には悪魔がいる……。空の能力を使ったとき、ラウドには‘だいぶ魔力を使う’と言ったが違うんだ。気を抜くと、悪魔が顔を出しそうに……俺があの声に支配されそうになるから……」

ジードが頭を抱えうずくまっていたのは、魔力消費が激しいからではない。体の底から這い上がって表に出そうな、‘悪魔’を抑え込むためだったのだ。
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