魔界動乱期
ラウドがふと過去を思い出す。
それは八十年戦争と呼ばれ、今でも語り草になっている一大戦争だ。
ラウドが全てを失った、ギルシャスとロジの戦争である。

「あの戦争のとき、たった一魔でギルシャスの師団長を何魔も葬り去った恐るべき魔族がいたんだ。そいつは‘無敵の属性を授かった’と言っていた。私は運良くそいつを倒す事が出来、そのときそいつの背中には‘六芒星’の刻印があった……」

その話を聞いたジードは、クレイの鎧を取り、身体を調べた。

「あ……あった」

クレイの背中には六芒星がくっきりと刻み込まれていた。

「やはり……。アバルが手に入れたのは、属性付加の術か!」

ラウドがそう確信する。

「ラウドよ、アバルはロジと手を組んだと思うか?」

炎駒が尋ねる。

「手を組んだか、属性付加の出来る術を開発したか。もしロジの王、ロイド・ジェシックが南の大陸を攻めようとするなら、姑息な手は使わず正々堂々と乗り込んでくると思うが」

「だが‘国の魔力’は魔族を狂わせるからな」

「炎駒……確かにその通りだ。だが、ロイドは‘国の魔力’に狂わされるような男ではないよ。やはり、学者の都であるアバルは、過去を解き明かし、力を手に入れたと見るべきだろうな」
< 107 / 432 >

この作品をシェア

pagetop