魔界動乱期

【ジード・エルナーク……名前の記憶を忘れるな。誇り高き血を忘れるな……】


「はっ！……またあの夢か。なんなんだよ、ったく……。親父、ちょっと出てくらあ！」

17歳になったジードは立派に成長していた。
身長は魔族にしては小柄な170センチメートル程。
背中まで伸びた黒髪を茶色い紐の髪結いで束ね、颯爽と高台を下ってゆく。

「危険なエリアには行くなよ！」

「わかってるって！」

危険なエリアとは、‘禁断のエリア’や‘オロチの洞窟’、ディナスのいる場所など、危険だらけのこの森でも特に危険を伴う場所の事である。
三十分ほど走ると、ジードは少し開けた場所に着いた。

「おっ、もう皆集まってるな」

そこには、様々な種族が五十魔ほど立ち並んでいた。

「ボス、全員揃ってますよ！」

集団の中の一魔がジードの姿を確認し、大声で叫ぶ。