魔界動乱期
「ディナスとの戦いには私は参加しなかった身ですので、返す言葉がありません。ゾイド殿は魔界でも影響力のある方だ。危険を感じたらこの森を脱出してください。今回の戦争は非常に厳しいものになる」

「すまんな」

不参加の表明を聞いたラウドは、ゾイドを説得するために来たのではない。
ゾイドの状況をわかっているゆえ、一族の存続に全ての力を費やしてほしい、という事を伝えに来たのだ。
ラウドが去ろうとしたとき、ゾイドがラウドを引き止める。

「だからな、ラウドよ」

「……はい?」

「この者をラウドに預ける」

「え……?」

ラウドの前に現れたのは、超燕部隊長のウィドー。
イグニの筆頭戦力である。

「一魔で‘万’の働きをするじゃろう」

ラウドはこの申し出に素直に感謝した。
このゾイドの決意はとても重たかったであろう。
一族を守ることを優先しながらも、一族最強のウィドーをラウドに預ける。

「ラウド様、たったイグニ一魔と思わないでください。……私が、‘イグニ軍’です!」

「もちろんだ。ウィドーがいれば、万軍を得た気持ちだよ」

ゾイドとウィドーの覚悟を受け止めた。
そしてラウドも決意を固める。

「万が一のときは私一魔が残り、森の魔獣を全員避難させる。私が、魔獣の森軍団だ!」
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