魔界動乱期
「では、君達はそのゾーマの力を私に貸してくれるというのか?」

「はい。魔界の未来のために。ではロイド様行きましょう。ゾーマの儀の準備は出来ております。時間がないのでしょう」

確かに、ロイドはもう四日も国を離れている。自国のために睡眠を削るほどの意識を傾けているロイドにとって、四日の空白はとてつもなく長い。

「ロイド様、ひとつお伝えすることがあります」

「なんだ?」

「ゾーマの儀は、並大抵の精神力では乗り越えられません。ゾーマは‘増魔’。魔族のなかに眠る闘争の血を限界を越えて引き出すもの。通常の、いや、ほとんどの魔族はその‘魔’に飲み込まれてしまう」

「そうなったらどうなる?」

「ただの、破壊の悪魔になるでしょう」

ゴクリ、とロイドのが息を飲む。

「あなたが‘魔’に打ち克てないと判断したとき、私はあなたを殺します」

「!?」

「カイル、あなたは物騒な物言いをする。ロイド殿、実際には殺しません。ただ……ゾーマで膨らんだ魔力を、風船を割るように弾けさせるという事」

フレアが説明をつけ足した。

「フレア、同じことです。ゾーマは途中で止めることは出来ない。破壊の悪魔になるのを止めるには、魔力を弾き、ゼロの状態にするしかないのです。つまり、そうなればロイド様は死んだも同然。ギガの暴走を指をくわえて見ているしかなくなる」
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