魔界動乱期
「では始めます」

ロイドは六芒星の中央に立つ。
そしてカイルがロイドの右胸に向けて手をかざす。

「ゾーマとは、限界を越えた魔力を引き出すため、右胸に新たなコアを作り出すもの。ロイド様、あなたの場合は……」

そのまま、しばらくの時間が経過する。

「私の作業は終わりました」

「終わり?なんともないぞ」

「ロイド様。……今まで会った魔族の顔を忘れぬよう」

「今まで会った……?………う……ぐあっ!うおおああぁぁぁぁ!!」

突如、ロイドから黒い魔力が溢れ出す。
それはロイドを覆い、体を持ち上げる。

「ロイド様、あなたから溢れ出す魔力は想像を絶する。その苦しみも……!」

このときロイドの頭の中では、光と闇のせめぎあいが繰り広げられていた。
次第にロイドを闇が包み込む。
真っ暗な世界が心の中を覆い尽くそうとしたとき、どこからともなく手が伸び、沈み行くロイドを引き上げた。

「お前は……リュウ?」

幻か現実か、リュウはロイドに向かって微笑み、そのままロイドの手を引っ張ってザガンへと連れて行く。
そしてロイドが見たものは、ザガン国民の絶え間ない笑顔。

次にリュウはギガの場所へ飛んだ。
王座に座るギガ。
リュウはロイドの手を離す。

「ギガ……ギガァ……」

ギガを見たロイドに、再び闇の世界が浸食し始める。
しかしそのとき、ロイドには見えた。
ギガの体内に押し込められたように眠るわずかな光を。
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