魔界動乱期
「でもさ、この森にはそれこそグレイドクラスの猛者がいるんだし、楽勝だろ」

「いやジード、甘く見てはいかん。三百年程前、まだトップエージェントではなかったレイナスと組んだ事がある。当時のレイナスで既にグレイドの師団長が務まる程の戦闘力と、軍師並の戦略を携えていた。あれから三百年も経っているんだ。エージェント全体の底上げも為されているだろう」

「ふうん、じゃあそのクラスのヤツらが来る可能性が高いのか」

「ルークも気を付けろよ。お前に何かあったら、森のバランスが崩れるからな」

「あ、ケルゲリオは今日はここで寝ろよ。夜に出歩くのは危険だ。明日の朝俺が森の外まで連れて行くよ」

「あ、ああ、ありがとうなジード……」

そして翌朝、ジードはケルゲリオを抱え森の出口に到着した。

「ジード、お前のおかげで命を失わずに済んだよ。今度森を出たら、俺の住んでる村に来いよ。セル山脈っていうでけえ山脈の近くにある村だ」

「ああ、そんときゃ寄るよ」

翌日、翌々日と、何魔もの賞金稼ぎが森へ侵入する。
そして大抵の者は、目標にたどり着く前に名もなき魔獣の手に落ちていった。

その光景も見慣れた頃、二魔の魔族が魔獣の森に足を踏み入れる。

「さて、まずはどいつを狩ろうか、ウラノス?」

「賞金稼ぎは後だケトス。我々の目的はキメラのディナス。アバルの闇ゆえ、賞金首に出来なかった生物兵器だ」
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