魔界動乱期

「ロメン魚？モノケロウスさん、ロメン魚って、どんな魚だい？イグニさん、わかります？」

「ウィドーだ。すまんが私にも……」

「もう！君達ほんとダメなんだから！いいかい、ロメン魚ってのは……」

モノケロウスは治療しながらロメン魚の絵を地面に描く。

「わかった！？」

「あ……うん、すげえ絵下手……。でもこれに似た魚捕ってくりゃいいんだな！」

ジードが飛び立とうとしたとき、大勢のウルフが口に何かをくわえてやってきた。
100魔以上いるであろうウルフの群れの先頭には副リーダーのガイがいた。

「話はこいつの狼笛で聞いた。俺達にしか聞こえない超音波みたいなもんだ」

モノケロウスのエリア付近で会話を聞いていたウルフがひょこっと顔を出す。

「君達！そ、その口にくわえてる魚は……ロメン魚！！」

狼笛により、大量のロメン魚が必要と知ったウルフ達は、ボスのルークのためにいち早く動き、ロメン魚を獲得した者から、次々にユニコーンエリアに集まってきたのだ。

「モノケロウス頼む！ボスを……救ってくれ！！」

「任せてくれ！ルークはこの森の宝だ！絶対に死なせはしない！」

ジードはこの光景に感動しつつも、またそれとは違う感情を胸に抱き、彼らに背を向けて歩き出した。
その後ろ姿を見たウィドーは、ジードの醸し出すオーラに少し違和感を覚える。

「ん？ジード、どこへ行くんだ？」

「高台に戻るよ。親父にこのことを知らせなきゃね」

静かに見送るウィドーは、ジードから溢れ出す黒い魔力をしばらく見ていた。

「あいつ、さっき会ったときと全く違う類の魔力を纏っていたな……」

そしてジードは……

「ルークさんをあんなに……。絶対に……絶対に許さん！！」

幼い頃から憧れの存在であり、ラウドとともに自分を育ててくれたルーク。
そのルークの壮絶な姿を目の当たりにしたジードは、これまでにないくらいの怒りを剥き出しにしていたのだ。