魔界動乱期
ザグレブは怒声をあげながら、不規則な動きをする刃の両腕で炎駒に攻撃を仕掛ける。

「俺もこのままじゃ失礼だな」

炎駒を覆う炎が、赤い色から濃くなっていき、最終的に真っ黒な炎に変化した。

「魔力を込めたゲリヤミックスに切れぬ物はない!炎や水でもだ!」

またも避けようともしない炎駒を、ザグレブの凶刃が振り抜いた。

「殺った!」

ザグレブが叫びながら、ふと腕の先に目をやると、刃の部分が消えてなくなっている事に気が付く。
炎駒を覆う黒い炎は、ゲリヤミックスさえも一瞬にして灰にしてしまったのである。

「なんだと!?」

そして炎駒は内在した魔力を解放し、回りを覆う炎がさらに激しく狂暴に燃え上がった。

「な、なんという魔力……」

「お前の言っていた‘確実'というのもアテにならんな」

炎駒はそう言いながら、スッとザグレブを通り過ぎる。
すると、この魔界で最も固いゲリヤミックスがスパッと真っ二つに分かれた。

「おの…れ……」

そして炎駒は、真っ二つに分かれたザグレブをその黒い炎でたちまち消し去ってしまった。

「極めた魔法は、どんな物質も断ち切る」

魔界に存在する三つのグレイドのひとつ、フロティア。
その元幹部、赤麒麟・炎駒はまだ力の底を見せていない。
< 170 / 432 >

この作品をシェア

pagetop