魔界動乱期
「ちいっ!」

ゼゴルは再度水刀を出し、土人形を切り裂いた。
しかし今度は土人形は崩れ落ちることなく、再度形を形成する。

「なっ!?」

そして……


ボオッ!!


土人形はゼゴルの目の前で、一斉に炎を放った。

「ぐおぁ……」

竜の炎は高熱度である。
ゼゴルは氷の防御をする間も、ましてや氷で自身にまとわりついた炎を消す間もなく、体の半分が溶けただれ、絶命した。

「重力防御をされてたら手出しできなかったがな。中途半端に覚えたての属性を頼ったのが貴様の敗因だぜ」

高質量の重力は炎や水はおろか、光でさえもねじ曲げる。
その力を防御に使えなかったのは、まだゼゴルの重力属性が未熟だったからに他ならない。

「ふう、久々にこんな手傷負っちまったなあ」

デグタスが地面にあぐらをかき、一休みしていると、ザッザッ、と誰かの足音が近付いてくる。

「大丈夫ですか、デグタス?」

「お、オメエ……、シンじゃねえか!」

「覚えていてくれたとは、嬉しいですね」

姿を表したのは、金髪で小柄なヒューズ。軽装な装備をしており、アバル軍の紋章はどこにもない。

「当たり前じゃねえか。昔っからの傭兵仲間で、今も健在なのはオメエくらいだからな。……で、オメエはアバル軍、てわけじゃねえよな?」
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