魔界動乱期
「もちろん違いますよ。今の私は‘魔穿義団(ませんぎだん)’の一員」

「オメエが魔穿義団だと?アバル進軍には魔穿義団が絡んでやがるのか?」

「いえ、それは無関係です。私はラウド様に用があってきた。我々は魔界にはびこる悪を穿(うが)つ義団。そこのリーダーにはラウド様こそ相応しい」

遡ること三十年前。
北の大陸で悪行の限りを尽くし、メディオまで登り詰めた国・バルカンを滅ぼした、わずか七魔の集団がいた。
一魔一魔が強大な力を持つその集団のリーダーは自分達を‘魔穿義団’と名乗ったという。

「何を企んでんのか知らねえけどよ、ラウドはもう表舞台には出ねえよ。そっとしといてやりな」

「ラウド様は必ず動きます」

「無駄無駄、さっさと帰りな」

「我々のメンバーの中に、かつて‘ギルシャスの風神’と呼ばれ名を馳せたラウド様の親友がいたとしても……ですか?」

「なんだと……?あいつはロジとの戦争で死んだはずだ」

「だが、彼の死体は誰も確認していない。魔穿義団を作り上げたのは彼ともう一魔。……魔界の危機が迫っているのですよ。ラウド様は必ず私が連れて帰ります。懐かしい顔に会えて良かった。では……」

シンがその場を去ろうとしたとき、デグタスから爆発的な魔力が発せられた。

「なんのつもりですか?」

「ラウドを巻き込むのはやめろっつってんだ。ラウドは表に出ることを望んでねえ」

「重傷を負った体でバカな事はやめてくださいデグタス。私はこの魔界のために最善の行動をとっている。そのためにはロジを!いや……」

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