魔界動乱期
シンは一瞬口をつくんだ。

「ロジを倒すって肚か?もし本当に‘あいつ’が魔穿義団にいるなら、そりゃあただの復讐なんじゃねえのか?ギルシャスの残党としてのよ!」

デグタスが攻撃を加えようと構えたとき、二魔の間に激しい炎が横切った。

「誰だ!?」

「オ、オメエ!」

そしてデグタスの前に移動し、守るかのように背を向けたその魔族がボソッと口を開いた。

「こいつを……、倒せばいいのか……?」

山羊の角を持ったヒューズの顔、上半身、魔魚のような下半身、呟くような口調。

「パーンじゃねえか!」

「大きな魔力を……二つ感じた……」

パーンの感じた二つの魔力とは、デグタスが倒したゼゴルと、目の前にいるシンである。

「なんだこいつは?」

潜在魔力の読みにくいパーンを前に、シンは少し警戒心を強める。

「パーン、やめとけ。このシンにはお前の笛は通用しねえ」

「本気のとき……、笛は使わない……」

「本気?」

すると、魚の尾ひれのような下半身が四つに割れ、次第にそれはカモシカのような脚になる。
さらにパーンの上半身には体毛が生え、顔もヒューズ色から山羊の魔獣色へと変わった。

「変身型の魔族か……、ぬおっ!こ、これは……!?」

シンはこの‘魔獣形態’になったパーンから発せられる膨大な魔力に目を見張る。

「こいつぁ驚いた……。それが、この前見られなかったオメエの力か」

自分が認めたデグタスを守るため、パーンの本気が牙を剥く。
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