魔界動乱期
恐怖にすくみ、動けないガイに妖狐の手が伸びる。
死を覚り、思わず目を瞑ったガイだったが、妖狐の攻撃はいつまでも自分には届いてこない事に気づく。

【森で一大勢力を築くボスの片目に免じて、今日は退こう。次はないと思え】

妖狐が去ってゆく足音を聞きながら、ガイが目を開けた。

「さあ、また俺のテリトリーでオメエを治療しなきゃな!」

「あ、あんた……!」

ニカッと笑って振り向いたルークの顔面からはおびただしい鮮血が流れる。
ルークは左目を失っていた。

自分の身を犠牲にしても仲間を守るルーク。
そのときからガイは、ルークのために生きる事を心に誓った。

そして今、ルークの命を脅かすであろうネロを前にしたガイは、死の覚悟を持ってそこに立っている。

「少し攻撃をしてみるぞ」

ネロの声とともに、地面の砂が大量に舞い上がり塊を築く。
その砂塊は数十メートルにも及び、ウルフ達の頭上に形成された。
その直後、砂塊が一騎に落下する。

「範囲が広すぎる!」

ガイが避ける間もなく、無惨にも砂塊がガイと数百魔のウルフ達を押し潰した。

「さあ、森に侵入せよ!」

ネロの掛け声とともに、残りのアバル軍が一気になだれ込んでいった。
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