魔界動乱期
「ピギィィ！！」

為す術なく地に伏すディナスのもとへ、イピリアが叫び声を上げて飛んでくる。

「イピリアか。もうディナスは永遠に起き上がらない。これで心置きなくラウドの始末に向かえる」

ネロが砂の鎧を解いて歩き出したとき、イピリアの体からキラキラした粒子がディナスに降り注いだ。

「なんだあれは？」

すると、七色だったイピリアの体が、みるみるうちに黒く、最初の状態に戻っていく。
しばらくしたときだった。

「返してくれてありがとよ……」

「なんだと！？」

心臓の鼓動すら止まっていたように思えたディナスが、ムクリと起き上がったのである。

イピリアの食事は、通常であれば何日にもわたって続く。
数百魔分の魔力を食らって眠りにつくはずのイピリアが、アバル兵数十魔の魔力を食らって食事を終えたのには理由があった。

それは沼の中にいるときから、膨大な魔力を食らっていたからだ。
細胞同調により驚異の魔族へと進化を遂げたキメラ・ディナスの魔力を。

そして魔力を還元されたディナスは、その真の力を開放する。

「進化したのはてめえだけじゃないんだぜ、ネロよ！」

今まで接したどの魔族よりも大きな魔力を、ネロは感じ取った。
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