魔界動乱期
「まさかここまで……。実質森のトップは貴様か、ディナス!」

「俺が森のトップ?……くく、ネロよ、てめえが思ってる程この森は狭くないぜ」

「何?」

そう言ったディナスの頭の中には、ラウドや妖狐、炎駒やルークなどの森の猛者達の顔が浮かび上がる。
そして強烈な光とともにディナスの頭を埋め尽くしたのは、ジード・エルナーク。

「ふっ、もしかしたらあいつが一番の化物かもな。俺の全てを変えちまったジードがよ」

「何をブツブツ言っている!?もうおしゃべりは終わりだ!」

ネロは再度砂の鎧を纏い、拳を振り上げた。

「炎駒が言ってたとおり、憎悪の力なんぞたかが知れてたぜ!!」

対向するように、ディナスも拳を振り上げる。

「巨魔となった私に力で敵うと思うな!!」

しかしネロの思惑とは裏腹に、ディナスの拳に重く冷たい氷の武装が加えられてゆく。
互いの拳が交差するときには、両者の腕は大差ない巨大なものになっていた。

「ぐはっ!!」

拳を被弾し、吹き飛ばされたのはネロ。

「あいつと決着をつけねえといけないからよ。今、森を潰されたら困るんだよ」

憎悪の螺旋から解き放たれたディナスの拳は、今までよりも遥かにその重さを増していた。
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