魔界動乱期
ゴブリンエリアに近づくと、ある異変にまずジードが気付いた。

「戦闘が行われている……?」

戦場はおそらくゴブリンエリア。
ジードはニコを連れ、先に進んだ。
そして遠目の木陰からジードの目に映ったのは、凄惨な光景であった。

「ゴブリンの死体が……」

三十魔近いゴブリンが息絶え、やや体が肥大化しているように見えた。
陸地なのに溺死しているような。

「ゴボッ!!ガボボッ!!」

更に先には、顔の回りに水がまとわりつき、息の出来ない状態で苦しんでいるゴブリンの姿。

「グレオ!!」

「待てジード!相手を見ろ!」

今にも飛び出しそうなジードを、ニコが必死に制する。

「あ、あれは……水猿(みずざる)のモルキ!なんで‘一魔エリア’のヤツがこんなところに!?」

‘一魔エリア’とは、言葉どおり、たった一魔でエリアを形成する事を意味する。
魔獣の森では、命の危険から身を守るため集団でエリアを形成するのが普通だが、稀に一魔エリアを形成する強者中の強者も存在する。
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