魔界動乱期
「あ、あれがラウドか。ちっ、俺もとんでもねえヤロウに挑もうとしたもんだ」

「デグタス、ラウドさんは銀術師なのですか?」

「あ、違えよシン。あの銀の杭はラウドが作り出した幻影だ」

「え!?では、ネロへのダメージは……?」

「あの杭はいずれ消える。だが、今は本物の杭だ。ラウドの幻影は、その瞬間はリアルなのさ」

「そ、そんな事が?もう、何でもありなのですね。負けるわけがない」

「ま、俺達レベルにとってみれば無敵に見えるだろうな。だが、更に高次元の魔族にとっては、当たり前のレベルらしいぜ」

「やはりバルザベルクさんや団長が惚れ込んだ魔族……」

ツカツカとラウドが近付いてくる。

「お前がディナスか」

「あ、ああ……」

一瞬ラウドを見上げたディナスだったが、少し気まずそうにそっぽを向いた。
それはもちろん、少し前に森の大戦争を引き起こした張本人という罪悪感があったからだ。

「お前のおかげであのアバルの強者を倒すことが出来た。礼を言う」

「……え?」

「今のお前から感じるのは正義の意志だ」

「けっ、偉そうに言うんじゃねえよ。俺はここで一休みするから、てめえらは早くどっかに消えな!」

ディナスは照れ臭そうに顔を背け、地面に寝転がった。

「ふっ、素直じゃないな。ところでデグタス、そっちの彼は?」

「ああ、こいつは俺の傭兵仲間のシンってんだ。今は魔穿……、ん!?」

デグタスは言葉の途中で意識を別方向へ向けた。
それはその場にいる全員が同じだった。

「なんだ、この魔力は!?こ、この巨大さは尋常ではない!ネロをも凌駕する程の……、デグタス、ラウドさん、きっとまたゾーマの暴走だ!行きましょう!」
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