魔界動乱期
「シン、デグタス、お前達は多大なダメージを負っている。あの魔力は私が止めよう。責任を持ってな!」

「あ、おいラウド!……責任を持つ?」

ラウドはこの魔力に覚えがあった。
妖狐かと間違える程の禍々しい魔力。
そしてそれは過去に感じたものよりも、遥かに強大になっていた。

「ジード……」

ラウドは、数百年前の、妖狐との会話を思い出していた。

‘妖狐、お前は魔神の血肉を食らったらしいな’

‘偶然にな、我はある神族の死に際に立ち会った。そのとき、ヤツはこう言った’

遥か数億年の昔、魔界は一度崩壊の危機を迎えた。
当時、神界でも上級神と同等の力を持つ魔神が神界から降りてきた。
戦闘に飢えるその魔神を、魔族と神族が力を結集させて打ち倒し、魔界の滅亡を防いだのである。
これは神界の恥とされ、神々は魔族からその記憶を消し去った。

しかしそのとき、魔神はこう言葉を残して死んでいったのだ。

‘いずれ私は生まれ変わり、魔界と神界を滅ぼす。それまで、せいぜい平穏な暮らしを楽しむがよい’

そして生まれ変わりを討つため、戦闘神のイーフリートが魔界に残ったが、それから数億年、生まれ変わりは現れなかった。

イーフリートがその命の火を消そうとしたとき、現れたのが妖狐だったのである。

‘その神族は、魔神の生まれ変わりを倒して欲しいと言って、我に血肉を差し出した。おかげで若さと、空の属性を手にいれたのだ’

‘じゃあお前の役割は、魔神の生まれ変わりを討つ事なのか?’

‘ふっ、一方的な願いを聞く義理はない。力はありがたく頂いたがな’
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