魔界動乱期
ガイラの考えは当たっていた。
命に魔力を込めて放つ魔法、つまりそれは魔界最高峰の‘命の魔法’と同じ原理なのだ。
樹という小さな命とはいえ、その威力はとてつもない。

「そんな事不可能だ!!あいつ、一体何者だ……?」

今までガイラの心を支えていたものは、雷化すれば無敵という慢心にも似た心。
自分にダメージを与えられる魔族など存在しない、とガイラは思っていた。

しかしその心が打ち砕かれ、生まれて初めて生命の危機を感じたガイラは、ひどく怯え始めた。
そのガイラに更なる追い打ちがかかる。

ジードが空の魔法を放つと、それはガイラの尾を削り取り消滅させた。

「うがあっ!!な、なんだ?命の魔法以外にもダメージを!?だ、だめだ、逃げないと殺される!!」

ガイラは恐怖に足をすくませながらも、あたふたとジードに背を向ける。
そのときであった。

「う……ぐう……、邪魔をするな……!出てくるな!」

ジードが頭を押さえ、苦しみ出したのだ。

「うがあっ!!」

ジードが纏っていた黒く、禍々しい魔力が一気に体内に引っ込む。
そしてジードは膝をついた。

「はあっ、はあっ……」

「何が起こってやがる?だが、さっきまでの魔力が今のあいつにはねえ!」

ガイラは野生の本能でジードの状態を感じとり、雷撃を放った。
自分に向けられた魔力を感じたジードは、咄嗟に身をかわす。

「うああっ!!」

しかしかわしきれず、ほんのわずかにかすった程度の雷撃は、ジードに深刻なダメージを与えた。
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