魔界動乱期
ジードのもとへ向かっていたラウドは、この一連の動きを感じていた。

「ジードの魔力が収まり、おそらくアバルの魔族であろう魔力が消えた。またジードを救ってくれたのか妖狐?魔神の生まれ変わりで、お前が討つべき相手のジードをなぜ……」

そしてその妖狐は、ジードを抱えながら自分のエリアへと歩を進めていた。

「ん……親父?……妖狐!?……さん?」

振動を感じたジードは、自分を抱えていたのが妖狐だと知り、驚愕とともに一気に目が覚めた。

【目覚めたか童よ】

さらにジードは、ある事実により、更なる驚きを覚える。

「………な、なんだこれ?まさか?」

抱き抱えられたジードの左ほほは、ちょうど妖狐の胸部に触れていた。
前回妖狐が現れたとき、ジードは暴走した状態だった。
しかしそれでも、ジードの記憶には妖狐の姿が残っている。

顔の半分が前髪で隠れ、体格に見合わぬ大きなダボッとした衣服を見にまとい、絶大な魔力を携えた恐るべき魔族の姿が。

そのときはその大きな衣服でわからなかったが、今ははっきりとわかる。
ジードのほほに当たる感触で。

「胸のふくらみ……?よ、妖狐さん!自分で歩けますから!」

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