魔界動乱期
【我は昔、魔神の血肉を食らった事がある。おかげで、この空の属性が使えるようになった】

妖狐はそう言いながら、風で舞い落ちる木の葉に人差し指を向ける。
すると葉は、空気に飲まれるように姿を消した。

「これは!?俺と同じ……」

【そうだ。この属性は神の血が流れる者にのみ使用できるもの。魔族には身に付かない。たとえゾーマでもな】

「じゃあ俺は……魔神の子なのか……?」

【正確には、魔神の生まれ変わりだ】

そして妖狐は、自分が魔神の血肉を渡されたときの事をジードに話した。

「じ、じゃあ、妖狐さんは俺を殺す事が……」

【魔神の一方的な願いを聞く義理はない。それにヌシはラウドの愛の対象。そんな者を二度も殺させはせん】

「え?今、なんて?二度と殺させはしない?」

【我がラウドに殺される理由を、これ以上増やす事はないという事だ】

「親父があんたを殺す?なんでさ?」

【我はラウドから最愛の者を奪った。それから我はラウドの前から姿を消した。そんな我をラウドは憎んでいよう】

そして妖狐は岩に腰掛け、続きを話し出す。

【我は長く生き過ぎた。もう自分の存在価値も分からぬほどにな。我はラウドに殺される為に今を生きている】
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