魔界動乱期
「親父は、あんたを憎んでるわけがねえよ」
【子供にはわかるまい】
「わかるさ!親父は全てにおいて俺の目指す魔族だ!そんな親父が……あんたの優しさを見抜けねえわけかねえ!」
【冷酷非道の妖狐に向かって‘優しい’か。変わった童だな。生憎、我はとうの昔に感情を捨て去った。優しいという事もよくわからんな】
「気付いてないのかい?親父の話をし始めたときから、あんた今も優しい表情してるぜ?」
【……?】
この言葉を聞いた妖狐は少し戸惑い、自分の顔を手で触れた。
目尻が僅かに下がり、顔の筋肉がやや弛緩している。
いつもの、作り出す妖かしの笑みではない。
そして妖狐はほんの少しだが、胸の奥が熱くなっている事に気付いた。
それは遥か昔、ラウドに抱いていた感情。
何より妖狐が驚いたのは、こんな話を他の魔族にしているという事実であった。
【不思議な童だな、ヌシは……】
ジードは、妖狐とラウドの間には互いに想い合う心があるのだと感じていた。
おそらく何かで生じた溝があるのだろうが、きっと二魔はどこかで繋がりたいと思っているのではないか、と。
少なくとも妖狐からはそんな深い愛情を感じたのだ。
【子供にはわかるまい】
「わかるさ!親父は全てにおいて俺の目指す魔族だ!そんな親父が……あんたの優しさを見抜けねえわけかねえ!」
【冷酷非道の妖狐に向かって‘優しい’か。変わった童だな。生憎、我はとうの昔に感情を捨て去った。優しいという事もよくわからんな】
「気付いてないのかい?親父の話をし始めたときから、あんた今も優しい表情してるぜ?」
【……?】
この言葉を聞いた妖狐は少し戸惑い、自分の顔を手で触れた。
目尻が僅かに下がり、顔の筋肉がやや弛緩している。
いつもの、作り出す妖かしの笑みではない。
そして妖狐はほんの少しだが、胸の奥が熱くなっている事に気付いた。
それは遥か昔、ラウドに抱いていた感情。
何より妖狐が驚いたのは、こんな話を他の魔族にしているという事実であった。
【不思議な童だな、ヌシは……】
ジードは、妖狐とラウドの間には互いに想い合う心があるのだと感じていた。
おそらく何かで生じた溝があるのだろうが、きっと二魔はどこかで繋がりたいと思っているのではないか、と。
少なくとも妖狐からはそんな深い愛情を感じたのだ。