魔界動乱期

「じゃあ……、セクドは精神を支配されなかった……？あ！つまり、魔神の精神支配から逃れる手立てがあった！？妖狐さんはそれを俺に伝えようと……？」

【そうだ。つまり、セクド・エルナークは、魔神にとって不良品になってしまったという事が、ジードを生み出した大きな理由だと考えられる。ジード、ヌシが暴走から自我を取り戻したきっかけを覚えているか？】

ジードは妖狐の言葉を受け、対ディナスのとき、そしてガイラのときを思い出す。

「ディナスとの戦いのときは……ラルーの顔を見て、戻らなきゃ、て思ったんだ。ガイラのときは、ラウドやルークさん、森の仲間の顔が思い浮かんだ。このままだと、皆に手をかけてしまうかもしれない、て」

「なるほどな。愛し愛される仲間のために自我をとりもどせたわけか。おそらく、孤独こそが魔神を育てる餌なのかもな。……だから、この森はうってつけだったのかもしれん」

「どういうこと？」

「魔神の生まれ変わりならば、その実力は一級品だ。国に産み落としてしまえば当然、国王や軍団長クラスの要職に就くだろう？そうなったら、多くの国民や仲間を愛し、また多くの者に愛される。そのおかげで、魔神の支配に対向出来る強い精神力が育まれる」