魔界動乱期
「な、何を言っている!?」

「好き合ってるならとっととくっついちゃえばいいのに。‘おとな’てのは簡単じゃねえのかい?」

「あいつとは色々あってな。しかし、いきなり懐かしい顔を見たり聞いたりしたな……」

数百年前、ラウドがある一件で悲しみのどん底にあったとき、ラウドを底から救いあげてくれたのは親友のバルザベルクの言葉だった。

‘俺は何があってもいなくならねえよ。ま、男に傍にいられてもむさ苦しいだけだけどな!’

ラウドの胸中には、昔の出来事が蘇っていた。


今から約四百年前―

当時の北の大陸・ユーロネシアの中央には、グレイドのギルシャスが悠然とそびえ立っていた。
そしてそのグレイドとほぼ隣接する形で新興メディオのギガ率いるザガン、ギルシャスの一番の対抗勢力であるメディオのリマという、三国状態が成り立っていたのである。

「もうすぐラウドが来るぞ!魔力を消せよ!」

「わかってるわよ」

ガチャガチャ、とラウドが家の鍵を開ける音がする。
そしてラウドが部屋のドアを開けたとき。

パァン!!

「む?」

「ラウド!第二師団長就任、六十周年記念おめでとう!!」

「バルザにエレナ。まあ、お前達がいるな、とは思ったが……ありがとうな」

当時ラウドは、異例の若さで昇進を遂げ、百歳を越えた頃から‘ギルシャスの英雄’と呼ばれ始めていた。
そして同じく異例の昇進を遂げていた親友のバルザベルクも、第二師団副師団長としてラウドの補佐を務めていたのである。
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