魔界動乱期
「エレナがどうしても祝いたいっていうもんだからよ」

「ちょ、何言ってんのよ!バルザだってノリノリだったじゃない!」

エレナとはギルシャス王の孫であり、二歳の頃ラウドが拾われたときから幼なじみとして育ってきた。
もう小さいときから二魔は互いを好きあっているが、ラウドの堅い性格もあり、付き合うまでには至っていなかった。
そんな二魔を、バルザベルクはいつも歯痒く見守っていたのである。

「さあて、今日は午後の訓練はないし、俺はちょっと用があるからよ。お前らたまにはゆっくりデートでもしろよ」

「バ、バルザ、何言ってる!?」

「そ、そうよ!用なんかないでしょ!」

「おいおい、世のレディー達が俺を放っておくはずがないだろ?じゃあな!」

そう言って、バルザベルクはラウド宅を出ていった。

「あいつ、モテない癖に何言ってんのよ。じゃ、じゃあ……あたしも帰ろうかな……」

「あ、ああ……。せっかく来たんだし、ゆっくりしていったらどうだ?」

ラウドの言葉を聞いたエレナは、パアッと明るい表情になる。

「そ、そうよね!そうだラウド!あたしお弁当作ってきたの。ピクニックがてら外にでも行かない?」

「そうだな。……ん?誰か来た」

チャイムも鳴らさずに勝手に家に上がり込む魔族は、ラウドの知る限りバルザベルクともう一魔。

「な、なぜ今来る!?」

【良い香りがするな。我への献上物か?】

「な、なんであんたが来るのよ!しかもチャイムも鳴らさずに……。ラウド!どういうこと!?」

「い、いや……深い意味は……」
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