魔界動乱期

「うあああっ！！」

そして恐怖に耐えきれなくなった一魔の影が、無造作に妖狐に突進してきた。

【立候補か。まず一魔……】

妖狐が手に真空を纏ったとき、脳裏にあの声が児玉する。

‘あなたさえ……いなければ……’

【ちっ！！】

一瞬躊躇した妖狐を、影が荒々しく押し倒す。そして影は妖狐の上に馬乗りになり、狂ったように殴り付けた。

【くっ！】

妖狐が力任せに起き上がると、残りの影達も触発されたのか、全員が妖狐に襲いかかってきた。
なにも考えずに突進し、妖狐の体を掴もうとするそれは、もはや攻撃と呼べるものではない。

しかし攻撃を躊躇う妖狐にとって、この稚拙な手法は最も効果的なものとなる。
遠目から魔法攻撃でも仕掛けてくれば、シールドを張ってやり過ごすことが出来るが、直接的な攻撃は避けるしかない。

無数の手をはねのけ、かわしていた妖狐の腰に、一魔の影が後ろから両手を回す。
そして勢いよく妖狐を地面に叩きつけた。

【ぐはっ！……しまった！】

複数の影に手足を押さえられ、顔や腹部を殴打される妖狐。
やがて彼らの狂気は更にエスカレートしてゆく。
上に乗っていた影が、妖狐の衣服をビリビリと破き、露になった乳房に噛みついた。

【あぐぅっ！】

それを皮切りに違う影が妖狐の首筋に、肩に、足にむしゃぶりつくように噛みつく。
その噛みつきは愛撫などではない。
強く力の籠った‘刃’は、妖狐の肉を噛み千切った。

【うっ……ああっ！！】