魔界動乱期
【ふ、あり得ぬ妄想だな。我は二度も命を救われた恩を返さねばならん。ラウドを守る。ラウドに仇為す者には死を。ヌシのためなら、この手を再び血で染め上げよう】

そして妖狐の心に、あの声が響く。

‘また殺す気?悪魔!あなたさえいなければ私達は幸せだった!’

‘あなたさえいなければ!’

‘あな……え……けれ…!’

‘あ………………け……!’

‘……………………………’


【すまぬな、あのときの女子(おなご)よ……】


このとき、妖狐はその記憶を消去した。
魔族を殺せなくなった数百年の呪縛を断ち切る程の‘殺すこと’への誓約。
ラウドを脅かす者は、自分の手で始末する。

そしてその頃リマでは、その脅かせし者が軍団長として据えついていた。

「影っつっても所詮は劣等種族。最初から俺が行けば良かったんだ」

恐ろしく攻撃的な魔力を身に纏ったその魔族は、瞬く間にその場から姿を消した。
そしてギルシャスのラウドとエレナが歩いている場所で、突如雷が落ちる。

「きゃっ!何……?」

「お前は……雷獣?お前がギガか!?」

雷獣はギロリとラウドを睨み付けた。

「けっ、俺を見たヤツァ皆、ギガだと言う。覚えておけ。俺はギドラス。リマの軍団長にしてギガの息子、ギドラスだ!いずれ殺しに来るから、今日は顔見せだ」

そう言うと、ギドラスは光の速さで消えた。
この時代には二魔の雷獣が存在したのだ。恐るべき狂暴性を携えた雷獣ギドラスが、ラウド達の運命を変えてゆく。
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