魔界動乱期
「ジード!」

ニコがジードのもとへ駆け寄る。
戦いに集中していたジードは、ようやくニコの存在に気が付いた。

「ニコ。グレオは……グレオは無事か!?」

「ああ、生きてる。お前の無茶な攻撃の賜物だ」

「よかった……」

ジードが安堵したその瞬間、ヒュヒュッと水の礫(つぶて)がジードとニコの顔の間を通りすぎた。
その礫は背後の木をも貫き、彼方へと消えていった。

ジードとニコは礫が飛んできた方向へ振り向く。
そしてニコは、ガクガクと体を震わせた。

「さすがの儂も、ムチウチは免れんぞ。小僧……」

「モ、モルキ……。なぜ立てる……?」

ジードは、モルキを殴り飛ばした時の感触を思い出していた。

「硬い後頭部の感触じゃなかった。弾力性のあるゴムの塊を殴ったような。あいつ、瞬間的に水のシールドを張ったんだ!」
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