魔界動乱期
ギドラスは雷撃をバルザベルクに向けて放った。しかし雷撃が竜巻の中に突入すると、ガクンと落下して地面に落ちた。

「なんだと!?風で光を…?い、いや、竜巻なら上昇するはず…。まさか、高重力…!?」

魔界史の記述において、過去に風の属性が高重力を生み出したという事実はない。

しかし今のバルザベルクの竜巻は、光をもその引力で引き込み、押し潰す高重力を生み出していた。

「ぬおおぉぉ!!」

ついに竜巻に引き込まれたギドラスは、空気の重みに潰されぬよう、必死に踏ん張る。

「雷獣!!お前を討つのは光を遮る闇じゃねえ!風の怒りを思いしれ!!」

遥かな上空まで舞い上がった竜巻のエネルギーが、徐々に大地へと集約される。
ブチブチッと重みに耐えきれなくなったギドラスの体が引き裂かれ始める。

「ぐっ…!!がぁっ…!俺は…無敵の…雷獣だ!!」

ギドラスが、己の持てる全ての力を注いだ雷撃を大地に落とした。

ドォン!!と大地が弾け飛ぶ。雷撃によって生じた爆風が、僅かにバルザの竜巻の重力を押し上げた。

「くっ!!」

「今だ!!」

一瞬生じた重力の隙間からギドラスが必死に逃れる。

「はあっ、はあっ、くそ…、逃れやがったか!」

仲間が傷つれられた怒りを爆発的な魔力に変えたバルザベルクだったが、最後の魔力を振り絞ったギドラスは間一髪で脱出した。
しかし最大の危機を逃れたギドラスは、バルザベルクを睨み付けたまま動く気配がない。

「あいつを攻撃すれば、動く力もなくなっちまう…。ち、仕方ねえ」

ギドラスは、竜巻から逃れるために魔力のほとんどを使い果たしていたのだ。

「バルザと言ったな。今は生かしといてやる。だが、次はねえ!」

激しい怒りを内に秘めたギドラスは、雷化して光の速さでその場を去っていった。

「手負いの雷獣を逃しちまったか。ち、俺もまだまだだな」

バルザベルクは己の未熟さを痛感し、気を引き締めた。
そして屈辱にまみれた雷獣ギドラスは、更なる狂気を身に纏い、復讐を誓う。

「ラウドにバルザ…。貴様らを殺して、偉そうに上から見下ろす親父を見返してやる…!」
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