魔界動乱期
「わけわからねえ攻撃や防御しやがる。雷撃は消される。ならば、雷化しての直接攻撃だ!」

ギドラスは雷化し、光の突進を試みる。
しかし一瞬にして何往復も行き交う光の線を、妖狐は目を瞑り右へ左へと紙一重でかわした。

「魔力感知能力が半端ねえな。だが紙一重でかわし続けてもダメージは蓄積されるぜ?」

ギドラスの言うとおり、ギドラス自身の体は避けているものの、そこから流れ出る電流まではかわしきれていなかった。
妖狐の体からはバリバリと放電している。

「何も出来ないまま倒れちまいな!」

更にギドラスが追い打ちをかける。
しかし、妖狐はギドラスの視界から姿を消した。

「何!?光の領域にいる俺が見失っただと!?」

今度はギドラスの回りの空気が圧縮され始める。

「うおっ!!」

強引にその場から飛び退いたギドラスだったが、右脇腹が半円状に削り取られていた。

【ちっ……】

「な、なんだ、ヤツの動きが捉えきれねえ!」

実際、妖狐はその場を一歩も動いていない。
ギドラスの攻撃の瞬間、妖狐は自分の横の空気を大幅に削り取った。
そして動作なしにギドラスの側面に回り込んでいたのだ。

だが妖狐にも、思わぬ誤算があった。

「ま、また消えた!?」

【確実に捉えた】

妖狐がギドラスに向けてかざした掌を握り込もうとしたそのとき。

‘また殺すの……?私とお父さんはあなたに殺されたのよ’

【なぜ……?この記憶は消し去ったはずだ!!】

妖狐の躊躇とほぼ同時だった。

「やめろ妖狐!!」
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