魔界動乱期
影三魔が一斉に妖狐に飛び掛かるが、妖狐の真空の前に姿を消す。

【ヌシら、見ていなかったのか?】

「な、なんだあれは魔族か……?まるで悪魔……」

その場にいるリマ兵は、皆が皆、恐怖にひきつらせた顔をしている。
そのリマ兵を前に、妖狐が微笑んだ。目の前のリマ兵が消えていく度に、妖狐の顔は妖しさを増していく。

やがてリマ兵は、妖狐を‘敵'と認識しなくなる。
もはや妖狐は、自分達が戦える敵ではない。
狩る者と狩られる者。
自分達はただの獲物なのだ。

一魔のリマ兵が逃げ出すと、それが口火となって妖狐に近いリマ兵からことごとく逃亡していく。

既にリマ兵の戦意は喪失され、主力や‘影'達も逃げ惑うのみとなった。

妖狐は自ら痛め付けた腹部の傷が開き大量の血を流している。
口からも血を吐き、リマ兵の返り血を浴び、全身を朱に染めた妖狐の視界がついにギドラスを捉えた。

「あ、あいつは……妖狐!!」

ギドラスも妖狐を見て逃げ腰になっている。
ついこの間、妖狐の得体の知れない強さを目の当たりにしたばかりだ。
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