魔界動乱期
メディオにたった一魔で乗り込み、百万の兵に囲まれながらも軍団長を討つ。魔界の歴史に新たな妖狐伝説が加えられた。

ラウドにとってエレナは、明るく温かく燦々と輝く真昼の太陽。
妖狐は戦場という暗がりの中で、ラウドの闇夜を照らす月。
ラウドは、太陽と月を同時に失った。

それから二ヶ月。
ラウドはその悲しみを面に出す事なく、日常を過ごしていた。

「ラウド、邪魔するぜ」

訓練を終えたバルザベルクはラウドの家に上がり込む。

「いないのか?おい、ラウ……」

バルザベルクが部屋を覗くと、ラウドが背を向けて座っていた。
ラウドの手には、写真が握られていた。
写真に写っているのは、陽気に笑うエレナと無関心を装う妖狐。

「ラウド……。そうだよな、忘れられねえよな」

バルザベルクにとっても二魔の存在は大きかった。
より身近に、さらに自責の念も加わったラウドの悲しみは計り知れない。
ラウドはハッとして写真をしまい込み、即席の笑顔を作る。

「お、おおバルザ。訓練終わったのか?」

バルザベルクはラウドの前に歩み寄り、あぐらをかいた。
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