魔界動乱期
「師団長は辛いよなあ。弱いところを見せられなくてよお」

「な、何を言ってる」

「今の俺はさあ、副師団長バルザじゃなくて、ラウドの親友のバルザだぜ?」

バルザベルクはラウドの肩に手を置いた。

「お前の情けねえ姿を何度見てると思ってんだよ」

「バルザ……」

「親友の前でくらいはさ、肩書き外していいんだぜ」

「バル…ザ……」

ラウドは泣いた。
二ヶ月間溜め込んでいた想いを一気に吐き出すかのように。

「ラウド、俺は何があってもいなくならねえよ。ま、男に傍にいられてもむさ苦しいだけだけどな!」

太陽が沈み、月は去った。
しかし悲しみに暮れるラウドには、何があっても揺るがない親友の存在が残っていたのだ。
温かい風がラウドを包み込んだ。

………………………

「親父、おい、親父!何ぼーっとしてんだよ?」

「ん?あ、ああ。親友の存在は大事だとな」

‘俺は何があってもいなくならねえよ’

「バルザ。お前のあの言葉は、本当だったんだな……」

そして過去に決別し、もうこの世から姿を消していたとも思われた妖狐も、偶然同じ森に移り住んでいる。
永遠の平行線と思われたその道は、ジードという存在を介して確かに交わったのだ。

「近づいたのか、更に離れるのかわからんがな……」

「俺がアバルに旅立つから感傷的になってんのか?安心しろよ親父。俺は絶対に戻ってくるからよ!」

新たな愛すべき存在の、懐かしさをも感じさせる力強い言葉に、ラウドは優しく微笑んだ。
< 263 / 432 >

この作品をシェア

pagetop