魔界動乱期
「森を出る前にいくつか寄る所がある」

ジードが舞い降りたエリアでは、研ぎ澄まされた高い魔力を持つ魔獣が出迎えた。

「英雄の息子が俺のエリアを訪ねてくるとはな」

赤麒麟、炎駒である。
ジードは炎駒の魔力を間近で見て、あらためてこの魔族の凄さを感じ取った。
内に秘められた烈火の如き魔力。
クールなイメージだが、その実かなりの熱情家で優しさに溢れている。
そしてその奥底には深い悲しみ……?

レベルが上がれば、魔力感知により相手のおおよその状態がわかるようになる。
今のジードには、相手の魔力から多くの情報を読み取れるほどの感知能力が備わっていた。
その獲得情報量は、おそらくラウドをも越える。

「炎駒さん、実は俺……」

ジードは自分がアバルに潜入することを炎駒に話した。
この大陸に詳しい炎駒に、アバルでの振る舞いを相談したかったのだ。
しかし炎駒を訪れた理由はそれだけではない。

「あと多分これは、ルークさんとかデグタスさんには荷が重いと思うんだよなあ」

「あいつらに出来ないような事が、新参者の俺に務まるのか?」

「ああ、うん。新参者とか関係ないから」

「?」

「いや、実はさあ、親父と妖狐さんの事なんだけど……」
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