魔界動乱期
取り込まれた細胞がディナスに反発し、抑えきれない怒りに支配されたディナスは、自我を失った。
そして数多くの過ちを犯してきたのだ。
内なる戦いが終結した今でも、ディナスの罪意識は消えることはない。

「オメエの親父の言葉で、少しは楽になったがな。すげえもんだな、魔界にその名を刻む魔族ってやつは」

「当たり前だろ。俺の親父なんだからよ」

このときジードは、なんだか不思議な感覚に覆われていた。
この言い様のない不安を理解してくれる魔族が目の前にいる現実に。

そしてジードは、自分がアバルに行く目的を話した。
それだけでなく、お互いに他にも色々な話をした。

ラウドはルークを親友だと言っている。
現在親友だと言っても、会ったばかりのときはそうじゃなかったはずだ。
もしかしたら、親友の始まりとは、こんなものなのかもな。
ジードはそう思っていた。
それはおそらく、ディナスも。

「アバルの件が一段落ついたらさ、多分俺、もうこの森から出ると思う」

「オメエには魔獣の森は小さすぎるからな」

「そんときはよ、その……お前も……いや、何でもねえ」

「俺は長い間孤独だったからよくわからねえが、ダチってのは心がつながってるもんなんだろ?」
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