魔界動乱期
高台を発つ前に、ラウドに言われたことがある。
移動には歩行を用い、あらゆる事を発見しながら進んでいったら良いのではないかという事だ。
外の世界を知らないジードにとって、見るもの全てが新鮮なものになろう。
発見しながら進む事は全てがジードの血肉になる。
ラウドはそう考えた。

「でもよお親父。見渡す限りの砂漠が広がってんだけど……」

しかし、何もないと思われていた砂漠にも驚きの発見がある。
それは、昼と夜の激しい気温差だ。
昼間は灼熱の太陽が容赦なく照りつけ、日が沈むと零度を下回る。

「なんで森からそう遠くもないのに、こんな急激な温度変化が。樹がないから?」

疑問を持つことは良い。
正解がわからなくても、いくつも答えを考えれば良いのだ。
答えの数だけ可能性がある。
イメージの中では全てが可能なのだ。
イメージとは魔法の原点である。
すなわち、‘発見がジードの血肉となる’というラウドの考えはここにあった。

ジードが森を出発して丸一日が経過した頃、遠くに村落らしきものが見えた。

「あれは……!きっとあそこに魔族がいる」

ジードは早足になり、村の中に入っていった。
< 272 / 432 >

この作品をシェア

pagetop