魔界動乱期
「お!?こんな名もない村に客とは珍しいな!」

農作業をしていた一魔の魔族が、ジードを物珍しそうに見ながら声をかけた。
一見すると年寄りに見えたこの魔族は、日傘をとると若々しい顔が覗く。
声の感じと雰囲気から、三百歳から四百歳くらいかとジードには思えた。

魔族は寿命が長いため、とかく年齢がわかりずらい。
それだけに年齢を気にする魔族もあまりいない。

「お前さん、どこから来たんだい?」

「え……と、リンクってとこ。首都で働くことを目指してね」

リンクとは、南の大陸の最南端のとても小さな国である。
炎駒から用意してもらった答えだ。

「リンクから!?そりゃあ大変だったな!あ、でも首都勤務目指すくらいだからひとっ飛びか?」

「はは。それも可能だったんだけどさ、初めての世界をじっくり旅しながら見ようと思って歩いてきた」

「へえ?この砂漠を平気で越えてこられたのかい。そりゃあすごいな。……よし!客なんて珍しいし、ウチで御馳走するぜ!俺はフォルツって呼ばれてる。お前さんは?」

「ジード」

「ジードか!ウチのカミさんの料理は村一番だ!ほら、来いよ!」

客がよほど珍しかったのか、フォルツは農作業もそっちのけでジードの手を引っ張っていった。
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