魔界動乱期
膨らみ始めた水はバシャアと音をたて溢れ出し、ジードの顔を覆っていた水も消えてなくなった。
さらにニコの回りの水も、同じく消えてなくなったのである。

「はあっ、はあっ……、ジード、一体どうなって……ジード?」

ジードの異変に気付いたのはニコだけではない。
モルキもまた、先程とは違うジードの変化を感じとっていた。

「この膨大な魔力は……小僧じゃったのか!?」

今まで体内に眠っていたジードの魔力が、あるきっかけで目覚めたのだ。

「モルキ、あんたのおかげだ」

「儂の……?」

「強力な魔法をこの身に受けて、より明確に魔法のイメージが出来たよ」

ジードが動きを止めたのは、意識が死の方向へ向かったからではなかった。
あの瞬間、ジードの頭のなかには明確なイメージが浮かび上がっていたのだ。

今まで魔法が使えないと思っていたジードが、その可能性の扉を開いた瞬間であった。

覚醒した‘光の子’が、静かにモルキを見据える。
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