魔界動乱期
オンタナは、第二の首都・セグルスツに次ぐ商業都市である。
東は海と隣接し、西には他のアバルの街がいくつも存在するオンタナは、他国からの攻撃を受ける可能性が極めて低い都市だ。

そのため多くのアバル国民がオンタナへ移住し、それに伴い商魔も入ってくる。
こうしてオンタナは一大商業都市になったのである。
いくつも建ち並ぶ巨大な建物は商業ビル。

「なんか、場違いだな、俺……」

きらびやかな装飾をまとうオンタナの魔族を見て、ジードはつい呟いた。
ジードの衣服は、森でも樹齢の高い頑丈な木を削り、叩いて柔かくした機能性の優れた衣服と言える。

それでも‘装飾’、つまりお洒落という観点から見ると、なんとなく下を向いてしまいたくなる。
ジードにはお洒落という言葉はいまいち理解出来ていないが、それでも自分が場違いな状態にあることは理解出来た。

「親子、男女のペア、綺麗な女性に国軍が徘徊、色んな魔族がいるんだなあ」

商業地区を抜けると、そこには居住区が広がっていた。
しかしそこで、ジードはひとつの事に気が付く。

「元々そうなのかな?なんだか家が後付けに強化されてるような……」

そこに建ち並ぶ全ての家の窓には、鉄板や板が不自然に不恰好に打ち付けてある。
更に家と地面の継ぎ目にも。
まるで何かに吹き飛ばされるのを防ごうとでもするように。
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