魔界動乱期
ジードは女性というものに初めて興味を持つ。

「フォルツさんとクーリンさんは好き同士だから一緒に暮らしてるんだよな。でも、親父と妖狐さんは好き同士なのに、なんでダメなんだっけ?お互いがその気持ちに気付いてないからか。俺は、マーシュの事、どう思ってんだろう?ドキドキするのは好きとは違うのかな……」

そんな事を考えていると、マーシュが料理を運んできた。
クーリンが作った量とさほど変わらないくらい大量だ。

「あの……、何が好きかわからなかったものですから、色々と。お口に合うものだけお召し上がりください」

魔獣の森で大した味付けもない食事をしてきたジードにとって、フォルツの家で食べたクーリンの料理は衝撃的だった。
この旅の最大の発見といっても過言ではないくらい、ジードにとっては衝撃だったのだ。

「こ、これは……!美味そうだ!」

そしてお決まりの如く、ジードは大量の料理をことごとく平らげていく。
そんなジードの姿を、マーシュは幸せそうに見つめていた。

「ふうっ、ごちそうさまでした!」

「お口に合ったようで、良かったです」

「よろしければ、明日も明後日も、心行くまで滞在してくださって結構ですから……」

「あ、ああ……」

首都を目指すジードは、長くひとつの街に滞在するつもりはなかったが、料理の威力はとてつもない。

「ねえジード兄ちゃん?」

「なんだい?」

「僕さ、ジード兄ちゃんがお父さんになってくれたら嬉しいな」

子供の無邪気な一言に、ジードとマーシュは同時にお茶を吐き出す。

「ユ、ユンク!な、なに言ってるの!ほ、ほんとに子供は何もわかってないんだから……」

「だって、僕、ジード兄ちゃんの事、好きだもん。優しいし、強いし。お母さんもジード兄ちゃんの事好きでしょ?」

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