魔界動乱期
「は!?そ、そりゃあ、私達を救ってくださった方だもの!す、好き……、い、いや、そういう好きというか、その……!」

「ジード兄ちゃんは?お母さんの事好き」

この質問に、ジードも、あわてふためいた。

(ちょ、ちょっと待て!俺はそもそも好きってのがなんだかわからないんだよ!え?これで好きっつったら、いわゆる結婚になるのか!?)

「え、と、俺はまずはアバルの首都で働かなきゃいけないから、まあ、でも、会いには来れるけど!」

(だあ!何言ってんだ俺は!)

ますます深みにはまるジードであった。

「まあ、ジード様はアバル国軍に入るのですか!?ジード様ならすぐに師団長ぐらいになられるわ!ジード様くらいお強い方なら、あの魔獣の森も一掃して平和なアバルを取り戻して……ジード様?」

マーシュのこの言葉で、浮き足立っていたジードの心がすぐに冷めきったものとなる。
その様子の変化に、マーシュは気付いたのだ。

「ど、どうかされましたか?」

「あ、いや。そういえば明日はダイフォンが来るんだし、早く寝た方がいいんじゃないかなって」

「そ、そうですね。ジード様もダイフォン退治に参加なさってくれるのですか?」

「バンジュウがいるから平気だよ、きっと。じゃあ、おやすみ」

ジードはそう言って、用意された寝室で横になった。

「マーシュも魔獣の森を消したいと思ってるんだよな。そうだよな、マーシュもユンクも、アバル国民なんだもんな」

トントン、とジードのいる部屋のドアをノックする音がする。

「ジード兄ちゃん?」

「ユンク?入っていいよ」

ユンクは部屋に入り、ジードの隣で寝転がった。

「ラウドの事を悪く言われたから怒ったの?」

「ユンクは親父を……ラウドを知ってるのか!?」

「うん。昔ね、お母さんに沢山絵本を読んでもらったんだ。魔界の英雄ラウド、最強魔族ラウド……。ラウドはね、困ってる魔族をいつも助けてくれるんだって。だからね、きっと今も誰かを助けてるんだと思うんだ。多分、アバルを倒そうとしてるのはラウドじゃないって、僕、思う」
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