魔界動乱期
「はあっ、はあっ、ジード様は?あ、あそこにいるのはバンジュウ様!……バンジュウ様!あの……昨日は本当にありがとうございました。して、ジード様は……」

「君達は昨日の……!いかん、ダイフォンは予定よりも早く上陸するぞ!早く避難するんだ!」

バンジュウの言葉の途中、強い突風が吹き付ける。

「きゃっ!」

「お母さん!」

マーシュは突風をまともに受け、壁に叩き付けられ、気絶してしまった。
防波堤はユンクの身長を上回っていたため、ユンクは突風の直撃を免れた。

「砂部隊は魔法で壁を作れ!風部隊はダイフォンの進行を止めろ!それからあの親子を離れた所に連れて行くんだ!」

しかし既にダイフォンは見える位置まで来ており、荒れ狂う突風で砂壁にはピキピキとヒビが入る。

「まずい!予想を遥かに上回っている!城内のパース、聞こえるか!?市民に避難を急がせろ!」

街には至るところにスピーカーが設置されており、城内からの放送は全てのオンタナ市民に届くようになっている。
また、空気中の粒子を集めて、そこかしこにスクリーンを投影出来る仕組みも作られている。

「う……ユンク?」

「お母さん!大丈夫!?」

目覚めたマーシュは、騒ぎ立てるアバル国軍を見て、事の大きさが容易に理解出来た。
更に、ダイフォンを防ごうとする兵士達が次々に吹き飛ばされていく姿を見て、自らの死を悟る。
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