魔界動乱期
「し、しかし、君だけよりは少なくとも力に……」

「ダイフォンを弾き返す事は出来る。しかしそうしたら、このダイフォンは違う場所に上陸するかもしれない。だから、こいつをコントロールするんだ」

「コントロール?そんな事、どうやって……?」

「威力、性質全てをダイフォンと同じにする」

「全てを!?そんな事が可能なのか!?」

「出来るさ。魔法は自分の手足みたいなもんだろ?今、俺の魔力を合わせてる最中だ。黙って見とけ!」

自分の手から離れた魔法を操作する。
これはバンジュウにの中にはない考えだった。
しかし今、ジードから放たれた風の魔法が徐々に竜巻の形を為すまさにその瞬間を目撃している。

「宙(そら)で思うがままに暴れまくりな!!」

ジードが、前につきだしていた両手を天へと向ける。
するとダイフォンが、その場所から上昇を始めた。

「おお、ダイフォンが!!」

そしてダイフォンは遥か上空へと消えていった。
そのすぐ後、街中から歓声が上がる。
その歓声は、オンタナを襲った未曾有の危機を救った、たった一魔の少年へと向けられていた。

「やってやれない事はねえのさ。だって、イメージは……魔法の可能性は無限だろ?」

しばらく目を見開いて愕然としていたバンジュウだったが、ガッとジードの腕を掴み、そのまま飛び立つ。

「お、おい、バンジュウ!どこへ……!」

「名乗るのが嫌ならそれでもいい!でも……皆にその声を聞かせてやってくれ!」

「あ?意味わかんねえぞ!」

そう言いながらも、ジードはさしたる抵抗もせず、為されるがままになっている。
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