魔界動乱期
それはジードが、衝動的にとった行動を自分自身考えていたからだ。
あのとき、マーシュとユンクだけを抱えてその場を離れる事も出来た。
しかしジードはダイフォンを止め、見知らぬ五十万のオンタナ市民を救った。
それどころか、敵であるアバル国軍数万の命をも救ったのだ。

「こいつが、一生懸命だったから……」

ジードの視線は、自分の腕を引っ張るバンジュウに向けられていた。

「さあ、着いたぞ!」

バンジュウがジードを連れてきた場所は、城内の放送室だった。
城に魔族の気配はない。
電源はつけっぱなしになっていた。

「皆!今、ダイフォンの脅威は去った!たった一魔でダイフォンから街を守ってくれたのは、この少年だ!」

街に、ジードの顔がアップで映し出される。

「おお、この方が!」「まだ年端もいかぬ少年じゃないか」「結構可愛い顔してるじゃない」「オンタナの……英雄だ!」

ジードには何がなんだかわかっていない。
それを察して、バンジュウはオンタナ市民の顔を放送室の何十とあるスクリーンに映し出す。

「これは……オンタナの魔族達?」

「そうだ。今、まさにリアルタイムで君の顔を全市民が見ている」

「ほ、本当かよ!?」

ポカーンと口を開けて間の抜けた顔をしていたジードは、途端に真面目な顔を作る。

「は、早く言えよな……」

「なあ、君から一言、皆に何かもらえないか?このダイフォンの影響で家をなくした者もいる。親、子供、知り合いを亡くした者もいるだろう。彼等に少しだけでいいんだ。君の勇気を分けてあげてくれないか?」

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