魔界動乱期
「セレナ様はいつも言っていたよ。まずは実際に害を為しているセル山脈の魔獣達を一掃するべきではないか、とね」

「それでも動かなかったのはなんでだ?」

「却下されたからさ。魔獣の森のヤツらは、我々が戦力をすり減らすのを虎視眈々と狙っているというのがアバル様の見解だからな」

「そんな事……。あ、でも、この行軍は許可が降りたって事だろ!?」

「実はね、これは我々だけの極秘行軍なんだ。もしも失敗してバレたりしたら、僕らは厳しい罰則を受けるだろうね。セレナ様は師団長を降格……、下手したら死罪だってある」

「国民のためにやってる事なんだろ?それがなんで死罪にまでなっちまうんだよ!?」

「国王の命令は絶対だからさ。しかもひとつの軍団を任されているセレナ様クラスの立場の魔族が命令に背いたら、その罰則は最高刑罰になっても仕方がない。ジードはわからないだろうが、国ってもんは大きくなればなるほど規律がしっかりしなくては成り立たないんだよ」

ジードはふと思う。
こんなに大きな国でも、国王の意向でその方向は簡単に変わってしまうのだ、と。
バンジョウやセレナの存在を見るに、彼らは少なくともジードの思っていたようなアバル軍ではない。

「そうだとすれば、癌は国のトップ……アバルにあるのか?で、でも……俺の仲間達を殺したのはアバルじゃない!アバル軍じゃないか!こいつらだって、アバルの命令があれば簡単に俺達に手をかけるヤツらなんだ……!」
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