魔界動乱期
「な、なあ」

「なんだい?」

「セレナってのは後任の師団長を任される程のヤツなんだろ?じゃあ魔獣の森の討伐にも行ったんたよな?」

「後任?なぜそれを?」

「あ、いや!俺はアバル首都勤務を目指す男だぜ?そんな情報知ってて当たり前だろ?」

「そうなのか?その……。これは内緒だよ?セレナ様は拒否したんだ。当時の副師団長だったコルトバ様に懇願してね」

「え、なぜ?」

「セレナ様はね、幼い頃、北の大陸に住んでいたんだ」

「北の?……ギルシャスが、あったところ……?」

セレナの生まれた国は荒れに荒れていたが、その情報を聞き付けたギルシャス軍がその国の政府を成敗し、平和を取り戻したという。
そのときギルシャス軍を率いていたのがラウドだった。
セレナはまだ幼かったが、その記憶は鮮明に残っている。
セレナにとって、ラウドは永遠に英雄なのだろう。

「コルトバ様はセレナ様の意を汲んで、師団長不在の師団を守るという名目で討伐隊から外したんだ。師団長のゼロス様やアバル様には本当の事は言わずにね。まあセレナ様は市民からの信望も厚かったし」

「ふうん、結構いいヤツだったんだな、そのコルトバっての」

「本心ではセレナ様に参加してほしかっただろうけどね。実力では第八師団一だし」

「なんだ、あの女が一番強いのか?じゃあなんで師団長じゃなかったんだよ。性格に難ありってやつか」

「女だったから。それに……色々あるんだよ」

「……あ?そんなの、関係ねえだろ」

「ゼロス様は、第一師団副師団長エドガー様の血縁だったしね。彼はとても利己的な……おっと、なんで君にこんな話を…。すまない、忘れてくれ」
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